関関同立に洛南も…私立小「転校制限」問題が波紋、少子化で争奪戦過熱

2015.7.14

産経新聞


 関西の私立小学校でつくる団体が、新設の洛南高校付属小学校(京都府向日市)に、近隣の私立小から児童を転入させないよう求めたとして先月末、公正取引委員会が団体側に警告を出した。

 団体側は6年間の一貫教育や経営安定化を図る狙いがあったと釈明するが、少子化で競争が激化する業界の構造的課題が浮き彫りになった格好だ。関係者は「私学同士の競争を制限するのではなく、いかに各校が魅力を高めるかが重要」と説く。



洛南で2児童が辞退


 発端は平成26年4月に開校した洛南高校付属小学校の転入学試験だった。公取委によると、洛南の運営法人が25年3月、西日本私立小学校連合会(神戸市)と京都、大阪、兵庫3府県の各連合会の訪問を受け、京都府や近隣府県の私立小から児童の転入を受け入れないよう求められた。

 これを受けて、洛南側は募集要項に、京都府内の私立小に在籍する児童は転入学の受験を遠慮するよう求める注意書きを記載。その後、府内の私立小に在籍する2人が「公立小に在籍」と偽った願書を提出して合格したことが発覚し、入学を辞退する問題に発展した。

 公取委は6月30日、4団体に独占禁止法に基づく警告を出した。西日本連合会は調査に対し「児童の転出を防ぐことで経営安定化を図った。転校は児童の負担が大きいので避けたかった」と説明したという。




私大参入で申し合わせ


 もともと3府県の各連合会は18年から22年にかけ、原則として加盟校間で児童の転出入を認めない申し合わせを決定。西日本連合会も24年、同一府県だけでなく近隣府県間の転出入も認めないことを決めていた。

 この時期は、「関関同立」と呼ばれる関西の有名私大が相次いで系列小学校を新設した時期と重なる。京都市内では18年、同志社と立命館が付属小を開校。20年には兵庫県宝塚市に関西学院初等部が、22年には大阪府高槻市に関西大初等部が開校した。

 関西のある進学塾の担当者は「同志社や立命館だけでなく、京都女子大付属や光華小、ノートルダム学院小(いずれも京都市)などに子供を通わせている保護者が、洛南が小学校を開くことを非常に魅力的に感じた」と話す。洛南小を“脅威”に感じている既存校は多いと分析する。




少子化が追い打ち


 私学の競争激化に追い打ちをかけるのが少子化だ。文部科学省によると、26年度の3府県の児童数は約88万8千人で、18年度と比べ8万人以上減少した。公取委の小倉武彦審査統括官は「少子化の中で私立小は増加傾向にあり、定員割れする学校も少なくない。共存共栄を図ったのではないか」とみる。

 大阪府によると、府内の私立小は21年度から17校。児童数は27年度が6828人で、21年度の8135人から16%減少した。人件費や教育研究経費に充当される府からの補助金も、26年度は17校に計14億円交付されたが、補助金は児童数などに応じて算定されるため、児童が減ると補助金も減る可能性がある。

 兵庫も事情は同じで、20年度が10校3797人だったのに対し、26年度は11校3633人にとどまった。京都も1校あたりの児童数は21~26年度の6年間で14%減っている。

 公取委の警告を受け、4団体は申し合わせを破棄。洛南小の27年4月入学の募集要項から「遠慮」の注意書きは削除されている。

 大手学習塾幹部は「各校が魅力を高める取り組みをしても、1~2年後には他の私立や公立小にも模倣される。競争は厳しい」と指摘する。




 教育評論家の尾木直樹さんの話 「児童の囲い込みともいえる転校制限は、私学の横暴で許されない。学校選択の自由を侵害しているうえ、私学間の切磋琢磨の機会まで奪っていることになる。(児童が転校を希望したとしても)真摯に受け止め、児童や保護者から選ばれるよう努力すべきだ」